この短剣は満洲帝國の短剣であるが、内外の諸資料にも見えないもので、明確なことはわからない。 全体の形状は日本の警察官短剣に見られる形状と概ね同じであり、このことから満洲の警察関係の物であろうことが推定される。 また、柄金の上部には、警察を示すと思われる「○に警」の文字があり、両側面には満洲国軍の五角星が施されている。 柄金中央には日満国旗が交差している図案がプレスされている。 柄金の材質や造りの程度から見て、本短剣は、幹部用のものではなく下級者向けのものであると思われる。 満洲帝國には、民政部警務司という官衙の下に各省県ごとの警察隊があり、軍と共に国内の匪賊討伐等治安活動に従事していたが、治安組織一元化のため、康徳3年(昭和11年)3月、警察隊約16,400名を民政部から軍政部(のち、治安部に改称)に編入して各軍管区内の地区警備司令官の指揮下に置いた。 その際、名称も警察隊から治安隊に改称された。 本短剣には、その刻印において警察と国軍の両方に関係する特徴があることから、この警察隊移管の際の記念に作られた物ではないかとも考えられる。 全長45cm、柄長11cm、鞘長34cm。 柄金は真鍮板製で柄前は小粒白鮫着せ、金線巻き。 鞘は鉄製でニッケル鍍金。 |
柄は、柄前が白鮫着せ、柄金は真鍮製で、前述の文様がプレスされている。また、「徳」の文字(元号「康徳」の一部か?)と製造番号らしい「26」の番号も刻印されている。 |
(平成11年11月22日掲載)