9月1日(金) 晴れ 

はや九月。戦局ますます苛烈を極める。卒業後の実習舞台の話に花がさく。

9月2日(土) 晴れ 

分隊内の水泳大会があり、十班リレーでは芳しくなかつたが個人でK君 H君 S君大いに張り切り優勝。賞としてハガキ三枚戴く。十班長の喜び例え様もなし。

9月3日(日) 晴れ 

足痛で診察。外出止め。五部の大掃除手伝う。昼食に分隊で作った枝豆食す。味良好。

9月4日(月) 晴れ 

航理 補機始まる。五部は、搭載試運転。六部磁石発電機。

9月5日(火) 晴れ 

天皇御写真奉戴 続いて奉拝あり。今まで岡崎航空隊に無くお下げ渡しになったものである。  大君の辺にこそ死なめ・・・・・の気概に燃える。

9月6日(水) 晴れ 

第二岡空初の分隊対抗の水泳大会あり。司令を迎え明治用水にて。我が二十一分隊からの二十名余りの選手がでる。十班より三名、二十一分隊は優勝の栄冠を得、分隊長以下喜び例え様もなし。夜五部にて選手を前にして酒保開く。
長久飴 うまさ格別。浦野分隊士より「教え子の輝かしき顔はやがて征く戦いの庭に・・・・・・・」

9月7日(木) 晴れ 

午前補機 午後高橋中尉を招いて軍刀術の講習を受く。名空派の分隊士にて年齢も高く海軍においては軍刀術の第一人者。海軍武徳教範を作られた人でもあり、30年間もやっておられるだけあって「藁束」を一撃でバッサリ。夜ペラ試験あり。

9月8日(金) 雨 

朝より大雨降る。大詔奉戴日なり。午後駆け足十キロメートル。

9月9日(土) 晴れ 

午前 整備要務 森田大尉。 午後陸戦座学。遊泳。バスの帰りに小野田教員に「殺す」と怒鳴られ驚く。

9月10日(日) 晴れ 

往復 16キロ「カンバツキョウ」  参加者には長久飴。クリマンジュウ。不参加者には、マンジュウのみ。

9月11日(月) 晴れ 

本日全治  しょぼしょぼ歩く。

9月12日(火) 晴れ 

朝より雨。夜梨二個配給青々としている。後から一個十五銭と聞き驚く。夕食後格納庫裏の開墾あり。そばを植えるためなり。

9月13日(水) 晴れ 

第十一回横鎮管下の防空演習あり。第四課業参加 第三応急作業隊として八兵舎に待機。別に何もなし。待ちたる搭載試運転始まる。

9月14日(木) 曇り 

第五期生入隊す。だらだらしているのに驚く。ひとつぶん殴ってやりたい気持ち、 入隊して四ヵ月 矢の如し 後二ヶ月で卒業。 夜 緊急呼集あり。他人の靴をはき、キャハンを巻く、夕温習時総合訓練あり。火タタキを持って屋根に上がる。

9月15日(金) 晴れ 

精神教育あり。「人がサボッテいるのを見ても、何ともなくなるのが一番良い。」と、言われる。そうは行かないので まだまだ訓練を要す。

9月16日(土) 曇り後晴れ 

午後 体力検定あり。幅跳び 手留弾なげ 懸垂

9月17日(日) 曇り後晴れ 

黄海海戦記念日なり。記念公演後雨のため兵舎にて軍歌。 奇数部 巻きキャハン雨具着用にて外出。十班カワヤ掃除、午後休業。 風強く大雨降り。昼食記念日で寿司あり。三時ころビスケット一袋。

9月18日(月) 晴れ 

一日中搭載試運転。 初めてプロペラを回す。座席の中に入ると搭乗員になり、今にも飛び出す心地。レバーを少し前に出す。回転すごく飛ばされそう。愉快。 午後不注意にて油を洩らし「前に支え」後、山本教員に全員バッター一本。

9月19日(火) 晴れ後曇り 

搭載試運転後、改装を行う。夜間試運転あり。第一警戒配備。試運転は昼間見えない排気ガスの出るのがよく見え混合ガスの良否の判断がしやすい。 帰兵舎後酒保あり。八千代飴。

9月20日(水) 晴れ 

隊内警戒第二配備。 三時起床あわてて戦友のキャハンを巻く。応急隊整列を八、九舎間に行う。火タタキを持ち整列。小笠原に敵機が来たらしい。六時ころ爆撃隊九六陸改が翼を連ね凱旋勇壮なり。見とれる。

9月21日(木) 晴れ 

午前中電気の教室あり。  搭載機試運転の成績わかる。

9月22日(金) 晴れ 

応用機整始まる。 変わった装置だがそのその精密さは驚くばかり。

9月23日(土) 晴れ 

秋季こう礼祭遥拝式後分隊点検ある。 本日より冬服(第一種軍装) 白より黒に一変す。

9月24日(日) 晴れ 

単独外出許可。  駅前のへたくそな写真屋で写真を撮る。三時ころ相沢十班長とに出会う。兄さんが潜水艦で戦死されたと聞き、敬虔の意を表す。 時間に遅れかかり岩津から隊まで駆け足。

9月25日(月) 晴れ 

夕温習時。目をつむると お経の声が聞こえる。

9月26日(火) 晴れ 

朝実習場に行く途中カラス鳴きわるし。家のことがきになる。

9月27日(水) 晴れ 

午前中 機整 午後 演習のタテツケある。・・・・・・・小野田教員の分隊に配属。

9月28日(木) 晴れ 

本日より三日間野外演習。 三時半総員起こし 朝食後用意 甘いビスケット 長久飴 六時出発 若林に向かって通常行軍  軍艦旗を先頭に副長以下陸戦隊の大行進   若林に近付くと尖兵の要務を習う。若林の川で敵との仮想遭遇戦
それより宿舎に向かって行進。名古屋勅使が原 健民修練道場なり。 行くまでに三根山の頂上にて一時間休憩  昼食後 昼寝。続いて現場説明 3,4人用の小さいバスに入る。五時食事  二十分隊。十九分隊は大騒ぎだが、我が分隊は、ひっそりし何時何があっても 飛び出せるよう準備おさおさ怠りなし。  夜食 雑炊 サツマイモを食べ久しぶりに畳の上で横になる。

9月29日(金) 晴れ 

朝四時半ころ緊急呼集。整列後解散 朝礼 体操   第一回遭遇戦の演習地に向かって出発。我等 第一大隊第二中隊第二小隊第一分隊なり。小隊長は 小野田教員なり。警戒行軍故 斥候を出し野原で空砲を撃ちながら突撃を敢行す。
かくて遭遇戦は終わり中隊長浦野分隊士より褒められる。宿舎にて昼食 0時半より第二回の演習  東山攻防戦 我が中隊は攻撃部隊 ○○街道を下りいよいよ攻撃にうつる。 山麓で敵 斥候と遭遇 撃退   副長 総指揮実戦のごときなり一歩一歩山に進む。途中空砲を撃ちながら最後銃剣にて突撃 敵を撃減 全山手中に収める。好評を受け 下山す。
夜 夜戦結構のため準備す。 五時半 東山攻防戦 夜は防衛部隊 芋畑に横になり芋をかじる。敵 いっこうに、突撃してこぬ。待ちくたびれ 火をたき 空砲を放つ とき最後の突撃あり。応戦す。かくて終わり好評。
下山 宿舎にて夜食  芋 汁粉 入隊以来初めての汁粉らしき汁粉。    寝具用意で ダラダラし罰直を受く。 その上小林分隊士より注意。

9月30日(土) 曇り後雨後曇り 

五時 総員起こし 第五回目の演習 追撃戦 下山して我々第二中隊は、追撃に向かう。池の付近で尖兵を出し、警戒しながら前進 駆け足で敵を追撃。雨が降りだし、追撃戦 真に迫る。敵の後衛部隊を捕捉 撃減。雨足激しく敵陣霞む。
中隊長の「突撃」合図に 一挙突撃敢行 ・・・・・・演習終了す。十時農家にて食事す。柿を戴く。午前十一時より兵舎に向かって、通常行軍  午後一時十五分統べて終了す。 直ちにバス。一生の想い出になるであろう。